『ワンサイドゲーム』

ワンサイドゲーム


「俺、緑と付き合うんだ」
 ある夏の夜、弟の遼二が私に言った。遂にお隣の緑ちゃんが告白してきたらしい。
「ふうん。付き合おうと思った決め手は何?」
「小さい頃からずっと一緒にいたし落ち着くっていうか、いないと変な感じがするっていうか」
「ごちそうさま」


 次の日の朝、さっそく緑ちゃんが家にやってきた。
「ね、早く行こ? プールっプールっ」
「こら、腕引っ張るなって! じゃあ姉ちゃん、行ってくる」
「遼くんしばらくお借りしますねー」と緑ちゃん。
「行ってらっしゃい。気をつけて」
 私は微笑み、手を振った。
 緑ちゃんの姿を見たのもそれが最後。


 坂道で緑ちゃんの自転車のブレーキが効かなくなって、それ自身は別に致命的ではなかったけれど、運悪くそこに車が来てしまって。


 確かに私は緑ちゃんの自転車に細工した。
 だけど緑ちゃんが弟と二人乗りで出かけるなんて思いもしなかった。
 二人乗りしよう、なんてどちらが言い出したんだろう。それも緑ちゃんの自転車で。
「なによ……わたしだってずっと傍にいたじゃない。死んでも二人は一緒ってわけ? そんなのズルいよ」


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講評

質問者:sirouto2 2006-07-30 16:30:00

ひんやりとした感触の作品。こういうダークサイドヒロインは印象に残りやすいです。題名とオチが結びついていますし、「ごちそうさま」とかごく普通の言葉を使うのも、この場合は怖い効果が出ています。抑制された文体が非常に内容に合っています。

しかし、問題は「萌え」という大元のテーマの実現です。ヤンデレはいいですが、救いがないのは萌えないですね。具体的な解決としては、これから殺す・死ぬことを予感させるところで踏みとどまるとかでしょうか。

期待賞(5pt)でした。