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『ユメ見る幼馴染とカノジョの行方』

「色々と世話になった」と僕の幼馴染の美加が言った。でもその口調は美加のものではない。 美加の体には、自称精神生命体のレマが寄生していた。彼女の任務はこの世界へ逃亡してきた同種の精神体を監視することで(敵対関係にあるらしい)、そのため彼女は知…

『彼女のオシゴト』

夏も終わりの八月三十一日、僕は蝉の声を聞きながら公園でアイスクリームを食べていた。僕の腰かけているベンチはちょうど木陰になっていて、残暑の日差しを幾分妨げてくれていた。僕の横に座っているのは幼稚園か小学校低学年くらいの年をした女の子で、水…

同じモチーフでもこうも違うわけで。

『一つの難題』 http://q.hatena.ne.jp/1158928009#a611236 いいなあ。月を背にした女の子っていうのが情景的に綺麗。かぐや姫+ゴスロリという組み合わせも面白い。こんな謎発想の私とは大違い。 秋・結婚と言えばかぐや姫。でもなー月とかうさぎってみんな…

『めいどのみやげ』

なんとか書けた。っていうか書いただけって気もする。 『めいどのみやげ』 九月二十日、彼岸の入り。男は独り畦道を歩いていた。気配を感じて後ろを振り返り、彼が言った。 「お帰りなさい」 「立場が逆ですよ」メイド服姿の少女が深々とお辞儀をする。「お…

『カウントダウン☆テロル』

これで一番最初に突撃しようと準備していたけど、ふざけているし、あまりにも面白くないのでやめた。 『カウントダウン☆テロル』 「私の創った結界領域《お茶会》へようこそ★」ゴスロリ服を着た幼女がサーカスの道化よろしく高らかに宣言した。「それじゃあ…

『夏休みといえばクーラーの効いた部屋でゲーム一気解き』

『夏休みといえばクーラーの効いた部屋でゲーム一気解き』 「いいの! ただ聞いただけ!」「遠慮するなって。代わりにプレイしてやるから。俺、そのゲームクリアしてるし」 夏休みのある日、幼馴染の鈴乃が突然俺の家に電話をかけてきた。どうやらRPGで詰…

『姫村さん観察日記』

『姫村さん観察日記』 「ひま〜」と「ねむいー」が口癖の姫村さんは数学の授業中、いつも通り暇そうにしている。少しウェーブのかかった髪の毛を束にして手に持ち、すごく真剣な顔をして毛先に見入っていた。どうやら枝毛探しをしているようだ。憂いを秘めた…

『お隣さん』

『お隣さん』 僕とミカの家は隣同士だ。正確に言うと、上下同士だ。僕の家がマンションの三階で、ミカの家が四階。だから僕とミカはいつも一緒に下校する。「お前ら夫婦かよー」って冷やかされて初めのうちは嫌だったけど、今ではもう慣れっこだ。 マンショ…

『ぴろーとーく』

『ぴろーとーく』 そろそろ電話切ろうか? ん……だいじょぶ…… ほんとに? うん……うん……うん…… それでさ …………ん おい ………… おーい ………… おいっ! ――ふぁいっ?! お前、今寝てただろ ……寝てないもん 寝てた 寝てない ねーてーた ねーてーなーいー どうする? …

『夏休みが嫌いな理由』

『夏休みが嫌いな理由』 「明日から夏休みだね……」 「だなー。楽しみ楽しみ」 「そっか、コムン君は楽しみなんだ、夏休み」 「え、もしかして嫌いなの? アマミヤは」 「あたしは……嫌いかな」 「うそーん。信じられねー。なんで? なんで?」 「学校がないか…

"Her majesty"

"Her majesty" 「……なによ。助けてくれなんて誰も言ってないでしょ。お礼なんて絶対言わないんだから」「なぁ、あの可愛い靴はどうしたんだ?」「今は履きたくない気分なの! 裸足な気分なの! だからもうほっといて」「隠されたのか。女子のいじめはインシ…

『ワンサイドゲーム』

『ワンサイドゲーム』 「俺、緑と付き合うんだ」 ある夏の夜、弟の遼二が私に言った。遂にお隣の緑ちゃんが告白してきたらしい。 「ふうん。付き合おうと思った決め手は何?」 「小さい頃からずっと一緒にいたし落ち着くっていうか、いないと変な感じがする…