"Her majesty"

"Her majesty"


「……なによ。助けてくれなんて誰も言ってないでしょ。お礼なんて絶対言わないんだから」

「なぁ、あの可愛い靴はどうしたんだ?」

「今は履きたくない気分なの! 裸足な気分なの! だからもうほっといて」

「隠されたのか。女子のいじめはインシツだよなぁ……。お前ももう少し転校生らしくクラスになじんだらいいのに」

「――クラスになじむっていうのは、偉っそうに女王面しているヤツのグループに従うって意味なの、この国では? それは初耳ね」

「そんなトゲトゲしなくたっていいだろ、少しだけ我慢すればいいんだから」

「ほらやっぱり。『我慢』なんじゃない。友達なんか居ても居なくてもいいけど――」彼女は力強く顔を上げ、透き通るような碧眼で彼のことをじっと見つめた。「私は私を失くしたりしたくはないの」

 教室に差し込む夕日が彼女を照らし、緩やかに波打つ金の髪に光の輪を輝せる。それは彼女が頭上に戴く冠だった。

 彼は彼女の前にひざまずき、彼女の素足にうやうやしく口づけた。その時彼は、彼女の足の指の爪、小さな一つ一つに何か光る液体が塗られていることに気がついた。

 彼の唇の温度を感じると、彼女はそっと足をひいた。


(489)


講評

質問者:sirouto2 2006-08-26 22:55:07

転校生のモチーフ。いきなり足フェチです。「時をかける少女」じゃなくて「足をなめる少年」ですね(これはひどい)。ペディキュア(足のマニキュア)より素足の方がいいと思うな。なんとなく。またこれもやはり海外の知識や描写が少しあった方が、単に読者が知らないというだけでも印象的になると思います。ひざまずくことで、それまでの立場が逆転するところに性的な享楽があり、結末が見所になっています。

期待賞(5pt)でした。